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Jul 27, 2021 - 7 minute read - Comments - review

[書評] HARD THINGSを読んで他者との協調・組織運営について考えた

HARD THINGSを読んだのでその感想をまとめておく。
困難に立ち向かうためのメンタリティはもちろんのこと、よい組織を目指すための方法や他者とどのように協調していくか学ぶことができた。

所感

構成としては「どんな苦境を乗り越えてきたのか?」である前半と、「そこから得られた教訓」の後半パートに分かれていた。

本書が良いのは、著者のベン・ホロウィッツがスティーブ・ジョブズのような天才ではないことだ。次々と襲う嵐に、すべてを解決する天才的な対策ではなく、とにかくいろいろな手を打ちまくって乗り切る。そして、最終的には困難の嵐を切り抜けて大成功する。凡人であるわれわれにとっては、ベン・ホロウィッツの考え方や手法は非常に参考になる。

イントロダクションにはこのように普通の人のように書かれているが常に身を裂くような決断を行い大勢の先頭に立って危機に立ち向かう姿勢はかなりの度胸が必要だ。常人ではない。
内容的には経営層、上層部向けのアドバイスが多いが、「トップはどう考え判断しているのか?」「組織ではどうあるべきか?」などを知ることができ1エンジニアという立場の自分でも読んでよかった。 次作の「WHO YOU ARE」も積読しているので読むのが楽しみになった。
(あとやっぱりビル・キャンベルはすごい)

どんな本なのか

Amazonの商品紹介ページより引用する。

シリコンバレーで一番注目されるベンチャーキャピタル(VC)、アンドリーセン・ホロウィッツ。 ブラウザを発明した天才、マーク・アンドリーセンとともに、このVCを共同創業したのが著者のベン・ホロウィッツだ。 ベン・ホロウィッツはネットスケープなどを経て、クラウド企業のラウドクラウド社やオプスウェアのCEOを務めた。

起業家時代のホロウィッツには、これでもかというほどの困難(ハード・シングス)が次々と襲った。 ドットコム不況が襲い、顧客が次々に倒産し、資金がショート。打開策を見つけてIPO(新規上場)を目指すも、 投資家へのロードショウ中には妻の呼吸が止まる。 上場してもパーティさえ開けないような状況でITバブルが弾け、株価は35セントまで急落。 最大顧客の倒産、売上9割を占める顧客が解約を言い出す、3度にわたって社員レイオフに踏み切らざるを得ない状況に――。 しかし最終的には、困難を切り抜け続けて、1700億円超で会社を売却するという大成功を収めた。

壮絶すぎる実体験を通して、ベン・ホロウィッツが得た教訓とは何なのか?

リーダーへ、そしてゼロから何かを生み出そうともがき苦しむ人へ、著者がシンプルで説得力のあるアドバイスを贈る。

「リーダー」とあるが、チームリーダーというより会社のリーダー(経営層)がターゲットだろう。
しかし一人のエンジニアである私にも突き刺さるようなアドバイスが多かった。

なぜ読もうと思ったのか

もともとは同著者の「WHO YOU ARE」を読もうと思っていた。
「評判もよさそうだし、前作から読んだほうがいいかな?(Kindle版半額だし)」と思い本著を読み始めた。

読んでわかったこと

前述の通り、この本はエグゼクティブがメインターゲットだ。
なので、組織運営に関するアドバイスが多い。ただの会社員である自分としては流し読みしてしまうところも多かったが、経営層がどのように会社運営を考えているかを垣間見られた。
また、エグゼクティブな振る舞いに関することは「他者にどう向き合うか(どう自分を示すか)」に関することなので、自分ごととして学べることも多かった。
ハイライトした箇所も思ったより多かったが、つよく学びになったところを2点紹介する。

すべての組織デザインは悪い

一番の気付きだったのは、すべての組織デザインに最良はないということだった。
いくつかの会社で働いてみて、いつも思っていたのは「毎年組織構造変わってばかりだなあ」ということだった。正直新卒の頃は「毎年名刺作り直さなきゃいけないし頻繁に変えていたら何もできないのでは??」と思っていた。

組織デザインで第一に覚えておくべきルールは、すべての組織デザインは悪いということだ。あらゆる組織デザインは、会社のある部分のコミュニケーションを犠牲にすることによって、他部分のコミュニケーションを改善する。
どんな組織化も必要悪であるから、悪が最小であるような選択肢を探す必要がある。この場合、組織デザインを社内コミュニケーションのアーキテクチャとして考えるとよい。

本著によると組織デザインは常に何かしらの問題点があるとのことだった。だからある問題が解決したら次の問題を解決するための組織構造に変化する必要性が生まれる。
特定の課題を解決するためにはその問題にフォーカスした組織構造を行う(コミュニケーション構造を変化させる)必要があるのだなと理解した。

フィードバックのやりかた

人に指摘をするとき、「ネガティブなフィードバックをするまえにポジティブなフィードバックをして相手のショックを和らげましょう。最後もポジティブで終わっておきましょう」のようなテクニックはご存知の方も多いだろう。
これを「小言のサンドイッチ」というらしい。

小言のサンドイッチ
最初の肯定的評価が「1枚目のパン」だ。次に難しいメッセージ、つまり否定的な評価が来る(これがサンドイッチの「具」)。
続いて「しかし全体としてきみには大いに期待しているのだ」といった類の肯定的な励ましで締めくくる(2枚目のパン)。
この「小言のサンドイッチ」は、部下に対して期待していることを印象づけることで否定的なフィードバックを社員の人格ではなく、特定の行動に向けるという副次的な効果もある。
これが否定的なフィードバックを与えるときの鍵だ。この「小言のサンドイッチ」は下位の社員に対する対応としては有効であるものの、いささか形式的に過ぎるという欠点がある。

正直「知っている人」が多い現状通用しないんじゃないかと思っている。

新米のCEOだったころ、私も慎重に組み立てた「小言のサンドイッチ」を上級幹部に向かって試したことがある。
すると相手は私を子供を見るような目で眺め、「ベン、お世辞はいいから、私が何を間違ったのかはっきり言ってください」と返された。
そこで私は生まれてついてのCEOではないことを思い知らされた。

本著でも「知っている人」に同手法を行い逆にイメージを下げてしまったことが正直に書いてあり、「やっぱそうだよね」となった。
ではどうすればよいのか?というとこのあとにいくつか指針が示されている。 どれもそのとおりと感じるが、以下の引用部分はとくによいなと感じた。

正しい動機からフィードバックを与えよ。
フィードバックを与えるのは相手の成功を助けるためであり、失敗を願うからではない。
相手の成功を願っているなら、それを相手に感じさせよ。感情を伝える努力をせよ。
相手があなたは味方だと感じられれば、あなたの言葉に真剣に耳を傾ける。

単刀直入であれ。
水で薄めたあいまいなフィードバックは相手を混乱させ、対処を迷わせるだけなので、いっそフィードバックを与えないほうがましだ。
ただし、意地悪くあってはならない。鈍感であるのもいけない。不必要に権威を振りかざしたり、欠点を執拗に指摘したりするのは、慎まねばならない。
フィードバックというのは双方向の会話でなければならない。居丈高な態度は会話を不可能にし、独白にしてしまう。

相手に気を使ったり、関係性を気にするあまり「当たり障りのない」フィードバックというなの自己満足コメントをしてしまうことが多い。
「ここを変えることであなたはどう良い方向に変われるのか?」「自分が楽をするためではなく、相手を思って考えたこと」という点を真摯に伝えられないといけない。

今後どう活かすのか

年度の切り替わりでは組織構造が大きく変更されることもある。「この構造になるとどうして課題が解決されるのだろう?」などともっと組織について興味を持てる気がした。
また、今後のスキルアップ・キャリアアップのためには「他者への働きかけ」「組織の中での影響力」を強めていく必要がある。この点でも本著に記載されていた「他者や組織を動かす力」を参考にしたい。

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