WHO YOU AREを読んだ。 同著者の「HARD THINGS」も良かったが今作もよかった。
所感
とてもよかった。ビジネス書でありがちな「本当なのか調べようのない一般人のボブ(仮名)さんの実体験(数行)」のような内容ではなく、 実際に偉業を成し遂げた人物や実在企業で起こった血の通った実例と、そこから導かれる「文化とは?」「どう文化を作るのか?」が学べた。
本著では文化の大事さと共にどうすれば文化は根付くのか育っていくのかが述べられている。
彼の経験から生まれた視点を通して読者にこう訴えかけている。最も強固で長続きする企業文化は、言葉ではなく行動に基づく。
高尚なミッションや社訓を掲げている会社やチームはそれが組織文化なのか?
そうではない。組織のメンバーの行動こそがその組織の文化を表現している。たしかにと思った。
社員がこれらの質問にどう答えるかが、その企業の文化なのだ。
トップがいないところで人々がどんな判断をするかこそが、企業文化というものだ。
社員が日々の問題解決に使う一連の前提が、企業文化だ。誰も見ていないときにどう行動するかが、企業文化なのだ。 文化は一度の判断ではない。長年のさまざまな行動が積み重なるうちに自然にできあがる決まりごとなのだ。
こうした行動をすべて、ひとりの人間がつくり出したり、行ったりするわけではない。文化をデザインすることは、組織の行動をプログラムすることだ。
人の真の姿は、どんな行動をしているかに表れる。あなたの行いが、あなたという人間なのだ。
この本が、あなたがやるべきことをする助けになることを願っている。そしてあなたがなりたい人になれることを願っている。
文化を育てるにはリーダーが行動に表さないといけない。リーダーが文化を体現することでそれがチームの文化になる。 私もチームでコーディングガイドや指針を作ったりすることがある。 (あたり前のことだが、)それをチームに根付かせるには自分が例外を作らずその指針に則ったコードを書き、行動していくしかないのだと教えられた。
一方で文化を組織に浸透させるテクニックとして次のような例が紹介されていた。
サンゴールは、自分が別人になる必要があると気づき、団をさらに強く結束させなければならないことに気づいた。
そこで、文化を変えるために一番効果のあるテクニックを使った。それはいつも一緒にいることだ。
かならず一緒に食べ、一緒に運動し、一緒に学ぶことで、実行中の文化改革を仲間に意識させ続けた。
毎日顔を合わせて文化について話し合っていれば、仲間にもその大切さが伝わるということだ
リモートワークが活発になってきた中で、物理的に一緒に行動を共にするのに変わる文化の浸透手段を見つける必要があるなと考えさせられた。
どんな本なのか
https://www.amazon.co.jp/dp/B086KX8LHZ
Amazonの紹介文の冒頭を引用する。
『HARD THINGS』著者、ベン・ホロウィッツ第2弾!
数々の困難を乗り越えた起業家が、武士道、ハイチの指導者、チンギス・ハンなどに学んだ最強文化のつくり方
起業したときにシリコンバレーの大物たちが異口同音に教えてくれたことがある。
「企業文化に気をつけろ。なによりも文化が重要だ」偉大な文化があっても、偉大なチームをつくれるわけじゃない。プロダクトがダメなら、文化が優れていても企業は失敗する。それでも文化を気にすべきなのは、人間の記憶に残るのは会社の業績でもなく、賞をもらったことでもなく、時にはプロダクトでもなく、会社の気風や気質だからだ。そこからみんなの純粋な目的意識が生まれる。
なぜ読もうと思ったのか
私は生涯現役プログラマー志望だ。とはいえ単独でものすごい成果をだせるわけではなく、チーム開発の中で成果を出す必要がある。
社会人経験年数的に後進指導のような立場やチームのルールを決めたりすることもある。
ただ行動指針などをつくるだけではチームに浸透しない。かといって毎日全員で音読するのようなことをしても浸透しないこともわかっている。
どのように文化をつくるのか、文化を浸透させるのかを知りたかった。
また、同著者のHARD THINGSもとても良かったので本著も期待して読んだ。
[書評] HARD THINGSを読んで他者との協調・組織運営について考えた
読んでわかったこと
本著ではいくつかのリーダーの実例から文化の必要性を導き出している。
- 人類で唯一奴隷革命を成し遂げたハイチの指導者、トーサン・ルーベルチュール
- 700年も武士による支配を可能にした日本の侍
- 世界最大の帝国を1000年前に築き上げたチンギス・ハン
- 殺人の罪で刑務所に入りギャングたちを統率した男、シャカ・サンゴール
- (Amazon商品ページ紹介文より引用)
そして本著は文化の重要性を述べたあと文化を醸成するためのテクニックも具体的に解説している。
- 死の淵から生き延びた著者の経験に加え、スラック、ツイッター、フェイスブックなどのスター経営者の経験から引き出したテクニック(Amazon商品ページ紹介文より引用)
- ショッキングなルールをつくれ
- 完璧を目指すな
- 人のまねをするな
- 言行を一致させる
- 自分が何者なのか自問する
- 悪い知らせを歓迎する
とくに良かった部分を引用しておく。
文化は社訓や社是のようなものではない。一度つくれば終わりというものではないのだ。「基準以下の行いを放置しておくと、それが新しい基準になる」と軍隊では言われる。企業文化も同じだ。文化に沿わない行いを見聞きしても対処しなければ、それが自分たちの新しい文化になる。ビジネス環境が変化し、戦略も変わっていく中で、企業文化も環境に合わせて変わり続けなければならない。目標は動くものなのだ。
でも、そこで働いていたときにどんな気分になったかや、そこで働いたことで自分がどんな人間になったかはいつまでも残る。社員の心から離れないことがひとつあるとしたら、それはその会社特有の気質と気風だろう。物事がうまくいかないとき、その気質や気風が人々をつなぐ拠り所になる。それが日々の小さな判断の道しるべになり、それが積み重なってある種の純粋な目的意識が生まれる。
転職や複数の事業部で働いた経験からしてもたしかにと思った。 そのときに携わったプロジェクトや障害の内容よりもどんな働き方をしていたのか、どんな組織文化でモノゴトを決めていたのか、そんな記憶のほうが強く残っている。
組織文化は奇妙なものだ。文化は信条ではなく行動の積み重ねなので、思った通りには絶対にいかない。だから「一度決めたら放っておく」のではダメなのだ。常に自分たちの文化を検証し修正していかなければ、本物の文化にはならない。
リーダーの本当の価値観を反映するものでなければ文化は定着しない。ただの耳障りのいい言葉は文化にならない。なぜなら、リーダーの行動によって、つまりリーダーが手本になることで文化はつくられるからだ。
その行動規範は実行できるか?武士道によると、文化とは信条ではなく行動の積み重ねだとされている。あなたの会社の文化的な規範はどのような行動として表せるだろう?
たとえば、共感は行動として表すことができるか?もしできるとしたら、行動規範として有効だ。もしできない場合は、違う行動規範を掲げたほうがよい。
文化はルールで表現されるものではない。自分たちの行動でしか自分たちの文化を示せない。
どんなに高尚なルールを掲げたところで行動をもって表せないといけない。
刑務所に入る人間の多くは、破綻した文化のもとで育っている。サンゴールのことを書きたかったもうひとつの理由もそこにある。
親に捨てられたり、殴られたりした人も多い。友人の裏切りにあってきた人もいる。そうした人間には、たとえば「約束を守る」といった共通のルールが通用しない。 刑務所は、文化を構築するには最も難しい場所だ。ここで文化を築くには、初歩の初歩、基本中の基本からはじめなければならないのだ。
「そういうのって元から優秀な人達を採用のが前提でしょ?」みたいなことは言えない。
刑務所で「団」を作ったシャカ・サンゴールは囚人たちに「約束を守る」「人を信じる」ということを教えるところから組織文化を作りあげた。
どんなメンバーかは関係なく、組織の文化がどう育つのかはリーダー次第だ。
リーダーは、しばらくはもやっとした状態で進んでいても、どちらかにはっきりと決めなければならない瞬間がくる。その時に進化できる人間もいれば、楽な道を選んで道徳的に堕落してしまう人間もいる。
誰もが始めから「覚悟を決めた」状態で始められるわけではない。
しかし自分で決めたルールや行動規範に対して痛みを伴う選択をすべきときがやってくる。
そのときに正しい選択をできるかで「文化」を育て続けられるか、腐敗していくかが決まる。
今後どう活かすのか
自分が所属するチームや組織でどんな文化を作っていくか。それをどう育みチームの文化として定着させるか。 より強いチームになるためのヒントとして本著の内容を日常で意識していく。 自分の行動がチームの文化を作っていることを意識して行動・意思選択していきたい。