ハイパフォーマンス集団になるためのヒントを探しにNO RULESを読んだ。
すべてをいますぐ真似することはできないが思想と目指すところにはとても共感できた。
所感
Netflixのような生産性の高い組織はどのようにパフォーマンスを出し続けているのかヒントを得られた。
最初に書いておくとタイトルでNO RULESと言いつつもNO RULESを維持するための約束事は存在する。
本著では「一流を集めたあとどのように接するか」が述べられていた。
せっかく優秀なひとをチームに迎えてもそこで一挙手一投足を指図していては実力を発揮できない。
組織のメンバー全員が自分を高めてくれる仲間の中でフィードバックループを回しながら主体的に自分のやるべきタスクに取り組む。
「めちゃくちゃ優秀な人達じゃないとそんなの無理じゃない?」と思うかもしれないが「めちゃくちゃ優秀な人達」だけの組織を作るための人事戦略などの紹介されており理想論ではなくNetflixの中でちゃんと実践できていることなんだなと感嘆した。
一般的な組織のメンバーはマネージャや上位層の指示や一定のルールに則って意思決定する。
Netflixでは規則や指示ではなくカルチャーやミッションによるコンテキスト(条件)の共有によって意思決定する。メンバーがカルチャーやミッションを理解していれば(上司がきちんと伝えられていれば)その選択は組織全体のビジョンに則った優秀なメンバーが考えた最高の選択となる。
また、思うところがあればその場で相手に伝えるというフィードバックのカルチャーもとても良いと思った。フィードバックループが大事というものの「指摘」についてはおろそかになりがちだ。
気づいたその場で相手に直接伝えるというのは受け取り手にとっては辱めに感じることもあるかもしれない。しかし中長期的にみれば受け取り手にとっては一瞬恥をかいてもすぐにでもフィードバックを受け取るほうがよい(何をどんな風に言ってもいいわけではなく、ちゃんと伝え方について組織的な教育がある)。
すべてをNetflixのようにすることは難しいだろうが、スタンドアローンコンプレックスを目指すにはこのような考えた方は大事だなと思った。
どんな本なのか
Amazon紹介文より引用
●Netflixはどうやって190カ国で2億人を獲得できたのか? ●共同創業者が初めて明かすNetflixビジネスとカルチャーの真髄。
■Netflixの「脱ルール」カルチャー
- ルールが必要になる人材を雇わない
- 社員の意思決定を尊重する
- 不要な社内規定を全部捨てよ
- 承認プロセスは全廃していい
- 引き留めたくない社員は辞めさせる
- 社員の休暇日数は指定しない
- 上司を喜ばせようとするな
- とことん率直に意見を言い合う
――新常態の働き方とマネジメントが凝縮
なぜ読もうと思ったのか
チーム文化について考える必要があり、よりメンバーが成果を出すにはどんな文化やルールが最善なのかのヒントがほしかった。
Netfilxが優秀なメンバーしかいないという話やSpinnakerなどでその技術力の高さは知っていたのでその秘密を知れたらと思った。
読んでわかったこと
ハイライトしたところを引用、数字はKindleの位置情報。
私たちのカルチャーは「能力密度」を高めて最高のパフォーマンスを達成すること、そして社員にコントロール(規則)ではなくコンテキスト(条件)を伝えることを最優先している。 64
トップクラスの人材にとって、最高の職場とは贅沢なオフィスやスポーツジム、あるいは社員食堂でタダで寿司が食べられるところではない。才能豊かで協調性のある仲間と働く喜びこそがその条件だ。自分を高めてくれるような仲間である。全員が抜群に優秀であれば、社員が互いに学びあい、モチベーションを刺激しあうので、パフォーマンスは限りなく向上していく。 371
良い環境とは圧倒的に成長できる環境とある。一流の同僚が最高の福利厚生というのはとてもわかる。
フィードバック・ループはパフォーマンス改善に最も有効なツールのひとつだ。チームワークの一環として日常的にフィードバックを組み込むと、社員の学習速度や仕事の成果が高まる。
フィードバックは誤解を防ぎ、互いに共同責任を負っているという意識を生み出すのに役立つとともに、組織の階層やルールの必要性を低下させる。 636
ブライアン、言うべき意見があるのに相手の反応を気にして口をつぐむようなやつは、ネットフリックスにいられないぜ。会社が君らを雇っているのは、意見を聞くためだ。会議室にいる人間は全員、率直な意見を言う責任があるんだ 715
会社のため、他者のためになるならば保身を考えずに意見を言うこと(後述の4Aの姿勢で意見を言うことが前提)。当たり前だけれども実践が難しいこの姿勢をNetflixではとくに重要視している。
即時フィードバックが基本なので「人前で指摘するのは相手に恥をかかせるのであとで呼び出して言おう」という配慮すら否定している。
率直さに関するネットフリックスの社内資料をかきあつめ、何十人というインタビュー相手に上手な方法を尋ねた結果、その内容は「4つのA(4A)」に集約できることがわかった。 787
具体的な4Aとは以下のこと。
- 相手を助けようという気持ちで(AIM TO ASSIST)
- 行動変化を促す(ACTIONABLE)
- フィードバックに感謝する(APPRECIATE)
- フィードバックを取捨選択する(ACCEPT OR DISCARD)
何らかの理由で人件費を負担しきれなくなったら、一部の社員を解雇することで、個人の給料は下げずに総人件費を引き下げ、能力密度の維持を図るだろう 1918
全員が優秀でも予算の都合がある以上相対的な評価によって昇給やボーナスが決まるというのは(良し悪しは別として)一般論として浸透していると思う。社員数を減らすことで予算を確保するというのはすごい発想だなと思った。ドライな言い方をすれば人数は少なければ少ないほどよいがここまでばっさりとは思わなかった。
リーダーが失敗を「公表」する最大のメリットは、失敗するのは恥ずかしいことではないと誰もが考えるようになることだとわかった。その結果社員は成功が確実ではなくてもリスクを取るようになり、会社全体でイノベーションが活発に生まれるようになる。自らの弱みをさらけ出すことで信頼が生まれる。助けを求めることで学習が促進される。ミスを認めることで寛容さが生まれる。失敗を積極的に語ることで社員が勇気を持って行動するようになる 2469
すでに無能だと思われている人が自らの失敗を認めると、そうした印象を強めるだけであることを示す研究結果もある。 2491
失敗を認める前に信頼貯金を積み重ねておくほうが無難らしい。
私がネットフリックスに入社したとき、ジャックからこんな説明を受けた。君にはカジノでチップをひと山受け取ったと考えてほしい。それを自分が正しいと思う賭けに自由に使っていい。最善を尽くし、慎重に考えて、最高の賭けをしてほしい。その方法は私が教える。失敗する賭けもあれば、成功するものもあるだろう。最終的に君の業績を評価することになるが、それは個別の賭けの成否で決まるわけではない。事業を成長させるために、チップを有効に使う能力そのものが評価される、と。
賭けをして失敗したからと言って、ネットフリックスをクビになることはない。ただチップを使ってスケールの大きい挑戦をしなかったり、何度も継続して判断を誤ったりすれば、仕事を失うことになるだろう、とジャックは言った 2742
良い例えだと思った。常に成功し続ける必要はない。問題は常にチャレンジしているかどうか。OKRのオブジェクティブのムーンショットにも似た精神であるなと感じた。
ネットフリックス・イノベーション・サイクル 本気になれるアイデアを見つけたら、次のステップを踏もう。
- 「反対意見を募る」あるいはアイデアを「周知する」。
- 壮大な計画は、まず試してみる。
- 「情報に通じたキャプテン」として賭けに出る。
- 成功したら祝杯をあげ、失敗したら公表する。 2756
ネットフリックスではアイデアの実施可否は発案者のみがきめる。無謀そうに見えるアイデアでも上司が止めることはできないようだ(本当に無謀なアイデアならばそれはそのメンバーを雇っている上司の責任だ)。
短期的には損失や失敗が出やすいかも知れないが、失敗を経験しより大きな視野で次の挑戦をし続けるには良い環境だなと思った。
ひとつのミスが大惨事につながる場面では、「ルールと手順」は好ましいというより、必須である。
こうしたことを頭に入れたうえで、あなたの事業の目的を慎重に検討し、「自由と責任」と「ルールと手順」のどちらが優れた選択なのか判断してほしい。正しい選択をするのに役立つ質問をいくつか挙げてみよう。
- あなたの業界では、すべての業務を完璧に実行しなければ社員あるいは顧客の健康や安全が脅かされるか?答えが「イエス」なら「ルールと手順」を選ぼう。
- ひとつミスが起これば、大惨事につながるか?答えが「イエス」なら「ルールと手順」を選ぼう。
- 同一の製品を安定的に出荷しなければならない製造業の経営者か?答えが「イエス」なら「ルールと手順」を選ぼう。 4967
Netflixでも手放しに全部に対して「賭けに出る」をするわけではないんだなと思った。
自分の仕事はオカネにまつわる機能をつくることが多く、アジャイルスタイルには全面的に賛成なものの、機能のリスクや重要さをベースに開発スタイルを検討しないといけないんだなと思った。
今後どう活かすのか
最近チーム論・失敗論的な書籍を渡り歩いているせいか同じ実験結果に何度も遭遇する。
同じ実験結果を述べる本は実験を通して関連性があるはずなのでこの流れをヒントにまた次の本も読んでいきたい。
実は本著で参照されているTHE CULTURE CODEも読了したので追って整理して感想をまとめる。