最近物覚えがよくなかったり、急に話しかけられたときの挙動が不安定なので読んだ。
プログラマのような職種とリモートワークの掛け算はとくに若年性ボケになりやすそうだと自覚した。
所感
日々の生活に新しい刺激がなかったり、意識して生活していないとヒトは簡単にボケてしまうんだなと痛感した。
症例に出てくるプログラマはいくつか見に覚えのある症状・環境だったので、衝撃をうけたというより「やっぱりこういうこと続けているとダメになるんだ…」という感想だった。
私は専門知識がないので用語の使い方として正解なのか不明だが、本著の中では「ボケ」を環境によって発症する「病気」の一種として定義しており治療・回復可能となっている。
記載されている対処方法は何かを購入したりどこかに通うものではなく、日常生活の改善方法といった内容だった。
医師の診断を受けたわけではないが、本に書いてあった症状や発症環境に現在の状況が類似しているところがあったので意識して自分の生活習慣に本著の内容を取り入れていきたいと思った。
どんな本なのか
Amazon書籍紹介より引用。
効率化社会の中で、現代人の脳に何かが起きている 「…………」(あれ? 今何を言おうとしてたんだろう?)まるでパソコンがフリーズするように、不意に言葉に詰まる。 度々思考が停止する。人や物の名前が思い出せなくなる。そういう「空白の時間」が増えている気がしないでしょうか? 放置しておけば深刻なボケ症状につながりかねない「フリーズする脳」の問題を、臨床経験豊富な専門医が語る。現代人の脳に今何が起きているのか?
なぜ読もうと思ったのか
冒頭に書いたとおり、ここ最近単語や人の名前が思い出せなかったり世間話(フリートーク)がとても苦手になってしまった自覚症状を抱えていた。 まさにタイトルの「フリーズする脳 思考が止まる、言葉に詰まる」という状態だったので読んだ。
- リモートワークで一歩も外にでない日がある。
- 土日も近所にしか出かけない
- 1日の大半をディスプレイの前で過ごしている
- 家庭の事情で睡眠不足
- 以前はボルダリングや登山をしていたが、ここ1年はそういう趣味も止めた
- 30代半ばになったのでそろそろ意識的にカラダのメンテをしないといけなそう
自覚症状以外に上記のような現在の生活環境も脳にはよくなさそうだったので改善したほうがよいかなと思っていた。
読んでわかったこと
本著を読んでとくに痛感したところを抜粋する。
意識して刺激を与えないと脳は緩やかにボケていく
しかし、脳というのは基本的に怠け者であり、楽をしたがるようにできています(脳の原始的な機能である感情や本能がそれを求めます)。そのため、あることが苦手になり、それをやらなくて済むようになると、無意識的にその活動を日常生活の中から排除していってしまうことがある。そうすると、訓練の機会が減って、ますますそのことができなくなります。
最初は忙しいからやらないつもりでいても、いつの間にか苦手になり、苦手になるとますますやらなくなり、やらなくなるとできなくなるという、その悪循環の先にあるのが、じつはボケ症状です。
お仕事がそうなっている方で、普段の生活でも同じようなことしかしない、気心の知れた人としか話さない、という生活を何年も続けていると、前頭葉機能を使って新しく行動や思考を組み立てていく力は、どうしても落ちてしまいます。そうして、何か変化を振られたときにフリーズする。咄嗟に状況を理解して、臨機応変な対応をするということができず、思考の空白ができてしまう。フリーズする脳には、一つにはそういう面があります。
わかってはいたが、刺激が少ない生活をしていると脳はどんどん機能が低下していくとのことだった。
「プログラマだし毎日新しいコードを書いたりバグの調査をして脳を動かしている!」と思っていたが、本人が「慣れていること」は「反射的・パターン的」な行動になり前頭葉が使われないらしい。
たとえば毎週のように大勢の前で講演をするような大学教授でも、何回も講演しているからこそ「パターン的」になった講演活動ではボケを止められないらしい。
同じ場所からだけではなく、角度を変えて見てみる。自分が反射的・パターン的に組み立ててしまえる思考の型から離れて、違う人の立場でも考えてみる。そういうことを柔軟にできるのが、前頭葉の選択・判断・系列化の機能が高く保たれている状態です。それが落ちてくると、人の意見を聞かなくなったり、物事に冷静に対処できなくなってきたりします。
似たようなことばかりしていると(知能・人格・理性を司る)前頭葉の動きが低下し、頑固になったり感情的になるとのこと。 ボケるだけでなく他者との円滑なコミュニケーションまで阻害することになってしまうはとても厳しい。そしてこの点に関しても最近とても気をつけているので恐ろしくなった。
リモートワーク・プログラマという仕事の環境の悪さ
テキストコミュニケーションを画面の前で続けているだけの生活はかなり脳に悪いらしい。
(さすがに脳に良い生活とは思ってはいなかったが)
一部のシステムエンジニアやプログラマーの人たちは、非常に過酷な環境で働かされています。常にギリギリでしか達成できないようなノルマを与えられ、長時間パソコンの画面に集中させられている。しかも、そういう環境に限って会話がなく、業務上の連絡もメールで行われていたりする。いわば強制的に脳の入力と出力を制限されているような環境で、こういうお仕事を何年も続けて、脳のバランスを回復させる努力もしていなかったら、どう考えてもボケてしまいます。
画面の中の細かい作業に集中していなければならないとすると、脳の使い方は相当小さくなっています。それがすぐには切り替わらないので、画面の前を離れても、しばらくは寝起きの頭で周囲を見回しているような感覚になり、横から話しかけられても、そちらにパッと注意を向けることができなかったりするわけです。
プログラミングのようなお仕事で向き合っている画面となると、もっと変化がない。縦軸横軸の世界に配置された文字列と余白を見ているだけで、目を動かす必要はほとんどありません。同じ距離感で小さな平面を見続けているだけ。極端に言えば、壁と向き合っているのと大差がない状況で、それを一日中続けなければならないというのは、脳にとってもっとも悪い環境だと思います。
本当は、目や体を動かして作業をしたり、書類を書いたり、大勢で会議をしたりするのが健全な働き方です。ところが一部のIT業界の人たちのお仕事は、その対極にあり、脳の一部をひたすら酷使させられている。そうすると、そのことは半分眠っていてもできるくらいになっていきますが、それ以外のことが全然できなくなってしまいます。たとえば、人と話し合いながら協調して作業を進めるということが苦手になり、苦手になるとますますやらなくなり、やらなくなると完全にできなくなってしまう。
働き盛りの人がボケていくときに多いのは、何もしていないような場合ではなく、何か一つのことをやりすぎている場合です。橋本さんが「休みの日に友達と出かけることが億劫になり、ぼんやりと過ごすことが多くなった」というのも、過労のせいだけではなく、仕事以外の脳の使い方ができなくなりつつあるからではないかと思います。
現在のリモートワークはツールが発達し、ZoomやSlack Huddleなどで簡単に会話を始めることができる。この本が書かれた15年以上前のプログラマの働きかたとはだいぶ環境は改善されている。
とはいえば「視線をほとんど動かさず画面を見て指を動かしているだけの仕事は、脳にとってもっとも悪い環境」と言われてもあまり反論できないなと感じた。(なお、現在の仕事が長時間労働というわけではない。本業だけならば私の毎月残業時間は10時間以下である)。
本当にそれは物覚えが悪くなったのか?
一方で物覚えについては「知っているつもりの知識が増えただけでは?」という言及もあった。
簡単に検索できる現在ではちょっと気になったことはすぐググって正解がわかる。そうすると「これは"知っている"」と思うことがどんどん増える。
当然ググって1ページ目の内容を見ただけの情報はすぐ忘れてしまうだろう。そういうのも含めて「(知っているはずつもりだったことが)思い出せない」と考える必要はないかもしれない。
プログラマという職業柄私が強く意識したのはプログラマ(システムエンジニア)の方の症例だった。
本著にはシステムエンジニア以外の症例なども数人分記載されており、日常生活の中で何らか「脳がフリーズしている」と思う瞬間がある人は何かしら参考になる症例があるかもしれない。
今後どう活かすのか
本著にはではどのようにフリーズする脳を改善していくかというアプローチも書かれていた。大まかな方針は以下の2節に集約される。
さまざまな脳機能を司っている神経細胞のネットワークは、日常的に訓練されていなければ衰退し、無意味な細胞の集まりに戻ってしまう。しかも脳は、むしろ積極的にその訓練の機会をなくさせようとしているところがあります。これは脳の原始的な機能である感情系がそれを求めるからで、その要求に従っていくと、最終的には何もしない人になっていくというのが私の考えです。
その中で自らをボケさせないためには、活動をある程度マルチにし、また、脳の使い方をこまめにチェックしていくことが必要です。自己満足的な環境をつくり、裸の王様になってしまっていないか。いつの間にか何かをしなくなり、低下させている脳機能はないか。フリーズという現象に注目しておくと、そのことに気づきやすくなるはずです。
具体的な改善方法としては私は以下の方法を取り入れていきたいなと思った。
- 1日の中で散歩をするなど画面とは異なる視点距離をとる時間を作る
- 視覚情報以外から情報を意識的に取得する
- 意識的に趣味の時間をつくる
まずはKindleの読み上げやポッドキャストを聞きながら散歩するところから始めようかなと思う。